素材別の接着加工情報② 金属編
お客様の接着したい板・パネルが金属の場合について、下記についてご説明をいたします。
金属別の接着難易度
金属の種類 | 接着可否 |
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アルミ(アルマイト処理) | ◎ |
アルミ(1050) | |
ステンレス | ○ |
鉄板 | △ |
銅 | 応相談 |
アルミ箔 | △ |
表面処理した金属板 |
- ◎:問題なく接着できる
- 〇:通常であれば接着できる
- △:一部の仕様や処理によっては接着が難しい
- ×:接着が困難
- 応相談:困難だが仕様や接着方法によって可能性あり
金属の接着加工について
被着材の力学的特性や表面構造、極性や有孔度などは接着に大きな影響を及ぼすため、接着剤の選定にあたっては、これら被着材の性質及び表面状態を十分理解しておく事が大切である。
鋼板
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概要(素材の基本性能や接着に関する大まかな内容)
鉄を主成分とした合金で、鉄の持つ性能(強度、靭性、磁性、耐熱性等)を人工的に高めた板状の鋼材で、塗装鋼板、ガルバリウム鋼板等コストバランスの取れた材料として使用例多数。
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接着の加工法、使われる接着剤
塗装鋼板のバックコート塗料でポリエステル系のものが接着剤と相性が悪い場合があり、事前に確認が必要です。接着剤の選定においては比較的、許容範囲が広いため、例えば「熱が掛かりやすい所で使用するのか?」「振動が掛かる場所で使用するのか?」「製造時に熱を掛けるのか?常温で硬化させるのか?」など、仕様や作業方法によって変えることが必要になります。
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その他(新素材開発へのワンポイントアドバイス)
鋼板は種類が多く、開発用途に適している。合金化された内容や表面に処理した塗膜等で様々な用途に活用が可能。使用用途によって鋼板厚みを検討し、付加価値の付いた鋼板を用いることで用意にオリジナル商品を生み出すことも可能。
アルミニウム
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概要(素材の基本性能や接着に関する大まかな内容)
アルミは大きく分けると1000~7000番手と7種類に分類され、銅、マンガン、シリコン、マグネシウムや亜鉛を加える事で弱点を補う製品郡となっていて、1000桁台の数字が変わる度に特徴が大きく変わっていきます。アルミの特性としては軽量で加工性が良く、放熱性の高い特徴があるが、柔らかく、傷つきやすい性質がある。これらの特長を生かし、庇やサッシ等屋外の工作物に使用されることも多い。
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接着の加工法、使われる接着剤
アルミを接着する場合は表面の処理が特に必要であるが、特殊な薬品等や設備が必要なため、コスト面を考えるとアルミの番手に対する相性の良い接着剤の選定が必要となります。使用用途によりよりリジットな強度を持つエポキシ系か熱膨張率を考慮し、材料の動きに追従しやすい弾性タイプの接着剤を選定することが多いです。
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その他(新素材開発へのワンポイントアドバイス)
求められる強度やコスト、使用場所によって選択される材種は違いますが、複合化による影響としては熱膨張率の違いによる『反り』の発生です。特に片面貼りや両面に異種材を接着する場合は接着剤及び材料の選定に注意が必要です。
ステンレス鋼
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概要(素材の基本性能や接着に関する大まかな内容)
金属の中で最も錆に強いステンレス。更に機械的強度、高温強度、低温特性が優れている事から様々な分野に利用されている。種類としては100種類以上ありますが、合金の比率や熱処理によって大きく3つ(マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系)に分類されます。
・マルテンサイト系・・・熱処理(焼入れ)によってマルテンサイト組織が形成され、硬度が高いステンレス鋼となります。炭素が少なく耐食性は他の2つと比較すると劣ります。代表的な品番はSUS410やSUS403
・フェライト系・・・ニッケルを含まないクロム系ステンレスであり、硫黄(S)を含むガスに対して高温環境下で腐食しにくく、オーステナイト系の欠点である塩化物による応力割れが発生しないという特徴があります。代表的な品番はSUS430
ニッケルが添加されていない分、オーステナイト系よりも耐食性は劣ります。フェライト系は価格が安い特徴もある
・オーステナイト系・・・他の2種類と違い、唯一のクロムニッケル系のステンレス鋼です。ニッケルとクロムの2つの成分が添加されることによって、酸化膜の密着力が上がるためよりサビに強く、耐熱性も上がります。代表的な品番はSUS304やSUS316 -
接着の加工法、使われる接着剤
金属全般に当てはまるエポキシ系接着剤が有用ですが、比較的接着剤に対して寛容な金属であり、使用用途に合わせた選定が優先されます。
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その他(新素材開発へのワンポイントアドバイス)
比較的高価な材料ですので、用途限定使用が多い。錆びにくいという特性から食品加工業様の壁材や屋外の熱の掛かる場所への採用が ただし、海水や清掃時に使用する塩素系の漂白剤等は表面の酸化被膜が破壊されて錆びる事があります。
銅
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概要(素材の基本性能や接着に関する大まかな内容)
硬貨に使用されている
・加工性が高い
・耐食性が高い
・伝熱や導電性が高い
・抗菌作業がある -
接着の加工法、使われる接着剤
銅の特性を利用し導電性を求める場合は導電性の接着剤を使用する必要を検討する必要がある。
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その他(新素材開発へのワンポイントアドバイス)
箔材(アルミ、ステンレス等)
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概要(素材の基本性能や接着に関する大まかな内容)
アルミ箔他、裏側にクラフト材等を打っていない材料はシワが寄りやすく、仕上がりに大きく差が出る商品となります。また、接着剤の種類によっても表面の仕上がりに影響が出るため、材料によって接着剤の選定作業も必須となります。
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接着の加工法、使われる接着剤
シワの寄りにくい処理をした箔材は枚葉作業でもシワが寄りにくいため、材料のロスを考慮し、バッチ式で接着積層していきます。 シワの寄りやすい材料はシワを伸ばしながら接着することが必要なため、ロールでの圧着・脱気等が必要であることから、連続生産が向いている。 基材の材質によっては接着剤塗布に工夫が必要であり、検討時要確認事項である。
※枚葉とは・・・連続ではなく、1枚1枚にカットして使用すること
※バッチとは・・・一つの生産サイクルで一度に生産される単位を意味している -
その他(新素材開発へのワンポイントアドバイス)
薄く・軽く・コストを下げながら、基材の基本性能を持つ箔材は現在用途しては板材への接着が主ですが、今後は3次元形状への適用が多くなると見込まれるため 弊社でも対応を進めて参ります。
その他金属
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高価な素材でもあるチタンについても多数の加工実績がございます。お問い合わせください。
金属に適した接着剤
金属に対する接着は化学結合の作用が大きく、水素結合の例では、金属表面の酸化物が空気中の水蒸気と反応して生じたOH基中の酸素原子とエポキシ系接着剤中に多く含まれるOH基中の水素原子との間で水素結合が生じている。そのため金属の接着にはエポキシ系接着剤が比較的適していると言われている。
金属の接着加工の流れ
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STEP 1
ヒアリング
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STEP 2
調査・分析
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STEP 3
加工方法の検討
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STEP 4
素材・接着剤提案
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STEP 5
試作
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STEP 6
問題だし・見直し・改善案
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STEP 7
製造加工方法
- 金属加工(平板or曲げ加工)
- 平板の場合は枚葉での支給かコイルからの切り出しか
- 曲げ加工の場合は特殊サイズでないか、同幅寸法品が大量でないか
- 同幅寸法品が大量の場合コイル寸法を加工必要寸法スリットする
- 特殊サイズ及び少量の場合はラインアウトしてシャーリング、プレスブレーキ、場合によってはタレットパンチプレスを用いて対応。
- 芯材となる材料の寸法加工及び端部の加工
- 鋼板若しくは芯材へ接着剤塗布
- 材料の積層(ライン作業の場合は連続流し)
- プレス加圧(加熱タイプの接着剤の場合は加熱加圧)
- 冷却加圧(常温硬化の場合は不要)
- 養生
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STEP 8
検品
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STEP 9
配送・納品